傷口に「ツバをつけとけば治る」は本当か?
2021年09月08日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
傷口に「ツバをつけとけば治る」は本当かという事を検証してみましょう。
料理中にうっかり包丁で指を切ってしまい咄嗟に指を舐めたという経験をお持ちの方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?
動物も傷のところをさかんに舐めている様子を映像などで見る事もあるかと思います。何故、動物は傷を負った時にそのような習性が備わっているのでしょう?傷口にツバをつけとけば治るということを本能的に知っているのかもしれません。
そのあたりの科学的根拠を考察してみたいと思います。唾液の治癒力について、日本唾液ケア研究会理事長で、神奈川歯科大学副学長の槻木恵一教授によると唾液は99%が水分と1%の有機成分と無機成分で構成されておりこの1%に細胞の活性を高めて修復を進めてくれる“細胞増殖因子”や菌が体の中に入るのを防いでくれる“抗菌物質”が豊富に認められており、傷の治りを早めてくれる働きをしてくれますと解説されています。また2019年には唾液の傷を治す効果について肯定的な論文がでているようです。
加えて同教授は唾液での傷の修復効果は小さい切り傷や擦り傷に限定される物で大きな傷は治しにくいので「ツバをつけとけば治る」は間違いではありませんが現代では傷に対する処置には、唾液より良い方法があるので、より効果的な方法を選択することをお勧めしますとも付け加えておられます。
最後に自分の唾液ではなく、他の人の唾液ではどうなの?という問題には以下のようにお答えになっています。
唾液中には、感染性のウイルスが存在することがあるので他人の唾液をつけることは、してはいけないことであると認識してくださいとの事です。今現在も新型感染症が猛威を奮っている中、当たり前の事ですがご注意いただきたいと思います。