口腔癌についてもっと知ろう!第1弾 口腔癌の種類?
2021年11月02日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
11月は口腔癌検診推進月間ということで口腔癌について深掘りして皆様にお伝えしたいと思います。日本人の死亡原因の第1位はがんですがその中でも口腔癌の死亡率は35.5%でがんの中では死亡率は12位ということになっており胃がんの33.8%より少し上という位置にあります。
ひとくちに口腔癌と言ってもできる場所によって舌がん、歯肉(歯ぐき)がん、口腔底(舌の下)がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がん等があり、そのうち日本人に一番多いのが舌がん(約60~70%)となっています。「口の中にもがんができるの?」と驚かれる方もいらっしゃいますが口腔がんはお口の中の粘膜のどこにでも発生する可能性があります。頭頸部にできるがんの中では、喉頭がんに次いで多いのが口腔がんということになります。がん全体からすれば口腔癌の発症割合は約1~3%と低い数値ではありますが、年間7,675人が口腔がん(咽頭癌を含む)で亡くなられておりこの数字は年々増え続けているのが現状です。それではひとつひとつについてみていきましょう。
●舌がん
口腔癌の中で一番多い癌です。虫歯になって尖った部分がある、歯が欠けた、不適合な詰め物や被せ物がある。合わない入れ歯を我慢して使用しているなど、舌に慢性的な刺激が加わることで発症します。初期段階では潰瘍やびらんができ進行するにつれて、食事のときにしみる、痛いなどの自覚症状が現れてきます。さらに進むと、食事や発音がしにくくなる等の障害が起こり日常生活にも支障を及ぼすようになります。
●歯肉がん
歯茎にできる癌で上顎より下顎の奥歯に近いところに発症することが多く初期段階では歯肉が腫れるくらいで無症状のうちに進行することが多いです。さらに進行すると潰瘍やしこり、腫瘍が大きくなって表面がカリフラワー状に盛り上がり、出血がみられるようになり腫瘍が神経まで達すると下唇の麻痺や顎を動かしにくいといった症状が出ます。
●口腔底がん
口腔底とは舌の下の部分のことでこの部分にできる癌を口腔底がんといいます。、初期段階では、小さな潰瘍や白斑、充血による紅斑が生じる場合がありますがほとんど無症状に経過するため発見や治療介入が遅れるケースが多く見られます。原因は喫煙や飲酒が影響していると言われ女性の口腔底がんが増えています。
●頬粘膜がん
頬っぺたの粘膜にできる癌で他の口腔癌と同様、欠けた歯や虫歯により尖った歯、不適合な詰め物や被せ物、合わない入れ歯による刺激、喫煙や飲酒などが原因と考えられています。初期段階は小さな潰瘍やびらんがみられますが、これも無症状で進行するので発見が遅れるケースが多いです。人差し指と親指で挟むように触るとしこりやふくらみ感じるのでこれが診断の助けとなります。
●口蓋がん
上アゴにできる癌です。原因としては喫煙や飲酒、辛い食べ物などの刺激物が考えられています。初期段階では痛みは無く上アゴの粘膜に赤い斑点ができるなどの症状が現れます。激しい痛みはありませんが、症状が進むと腫瘍ができて、大きくなると強い痛みを感じるようになります。
●口唇がん
唇と皮膚の境目あたりにできる癌です。原因は喫煙、飲酒、紫外線などとされています。初期段階では、唇の表面が荒れる、かぶれるなどの症状があり進行すると、しこり、潰瘍、びらん、カリフラワー状の腫瘤がみられるようになります。口腔内にできるがんとしては他の口腔癌に比べて発症率は低いです。
以上が口腔癌の種類となります。口腔癌は初期の場合、多くが無症状に進行しますので発見、治療介入が遅れる場合が多く死亡率が高い原因となっています。口内炎のようなものだと1〜2週間で自然に治ってきますがそれ以上経っても治らない場合は口腔癌を疑う必要があります。口腔内の粘膜に異変を感じるたら躊躇なく診察を受けることが肝心です。