歯の根の治療(根管治療)に時間がかかるのは何故?
2022年03月07日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
軽度の虫歯治療であれば、虫歯に侵された箇所の歯を削ってレジンを詰めたり型取りをしてインレーを詰めたりするだけで済むので1~2回の通院で治療が完了し、それほど長い治療期間はかかりません。しかし、虫歯菌が歯の内部の歯髄と言われる神経の部分にまで到達した際には根の治療が必要となり治療回数もそれなりにかかるようになります。根の治療のことを根管治療と言いますが根管治療を行う目的は、感染によって汚染された組織をきれいにしていくことです。
しかし根管内はとても細くて複雑な構造をしているため簡単には清掃することができずリーマーやファイルという小さな器具を使って根気良く丁寧に汚染物質をを取り除いていきます。感染の程度が軽度で汚染が進んでいなければ根管治療も3〜4回程度で済むこともありますが、根尖病巣を形成しているような重症の場合はなかなか汚染物質が取りきれず数ヶ月から半年程度と長くかかる場合もあります。汚染が根の先端まで到達し病巣を作っている場合は抜歯という選択肢とあるわけですが当院では出来るだけ歯を残すことを第一選択として治療に取り組んでいますのでその事をご理解の上、患者さまにも治療に根気よく来てもらいたいのです。
初期の治療でとりあえず痛みはとれますがその後の長い期間を根管治療に費やすことに抵抗を感じ、痛みもとれたので通院を中断してしまおうという患者さまも中にはいらっしゃいます。しかしそれはとても危険なことでそのまま放置してしまうと容易に再感染を引き起こしせっかく保存できた歯を最終的に抜く羽目に追いやってしまいます。逆に痛みがないからといって感染物質が取りきれていない状況で根管治療を終了し被せ物を被せてもその後必ず再発して痛みが出て治療を繰り返す事になります。なのでしっかり根管治療を終えて被せ物をして治療を終了した方が治療を何度もやり直す事にはならないので結果として通院回数を減らすことができるいうわけなのです。このように歯科治療で大事な事は、患者さまの理解と信頼関係にあります。やみくもに治療回数を引き伸ばしているわけではございませんのでどうか最後まで治療に来ていただけるようお願い申し上げます。