歯周病が出産に及ぼす悪影響
2021年12月08日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
歯周病が出産に及ぼす悪影響についてついて解説いたします。慢性的に歯周病に罹患していると様々な全身の病気の発症や進行への危険性を高めることは知られています。皆さんは出産に対しても歯周病が悪影響を及ぼしていることはご存知でしょうか?
歯周病に慢性的に罹患していると歯周菌とその菌が産生する毒素、プロスタグランディンや炎症性サイトカインなどのケミカルメディエーターが炎症部位に発生し、これらの炎症性物質が歯肉の毛細血管を通じて全身に運ばれることによって心疾患、脳卒中、糖尿病、認知症、関節リウマチなどに加え、出産に対し、早産、低体重児出産などを引き起こす危険性を高めることが分かってきました。歯周病が悪化するに従いその量は増えていきそれぞれのリスクは更に高まることになります。
一般に妊娠すると女性ホルモンの関係で歯肉炎にかかりやすくなるといわれて います。これを妊娠性歯肉炎などと呼んでいますがこれはエストロゲンという女性ホルモンが歯周病菌の増殖を促すことによります。妊娠により女性ホルモンが増えるとそれを餌にする歯周病菌が増え歯周病が悪化しやすくなるというわけなのです。そして早産や低体重出産につながる要因としては歯周病菌によって炎症が起きると、サイトカインといわれる物質が増加しこの物質はプロスタグランジンの分泌を促します。本来陣痛は、プロスタグランジンという物質の分泌が高まることによって子宮収縮が起こり始まります。歯周病によってプロスタグランジンの濃度が上がると、妊婦さんの身体は早めに出産開始のゴーサインを出すことになり早産、低体重出産を引き起こすのです。
早産や低体重児出産のリスクは歯周病のない人に比べて5~7倍であるといわれています。妊娠がわかったらまず、歯医者さんを訪れてください。そして定期的なケアを受けると同時に正しいホームケアの仕方を学んで実践しましょう。当院では出産前から生まれてくるお子さんの虫歯予防のためにも出産前のお母さんのお口の環境を良くすることを提言しております。そうすることで赤ちゃんに虫歯菌をうつさないということにもつながってきます。妊娠時こそしっかりお口のケアをしましょう。