歯周病とメタボリックドミノの関係性
2021年11月16日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
歯周病とメタボリックドミノの関係性について解説いたします。
まずメタボリックシンドロームとは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれ、高血圧、脂質異常、高血糖のいずれか2つ以上を併せもった状態を指します。これは不良な生活習慣が少しづつ積み重なって引き起こされるもので最終的には糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などの病気で死に至る恐ろしい病態なのです。ではメタボリック・ドミノとは何かというと過度な飲酒や喫煙、過食、運動不足、ストレスなどの不良な生活習慣が積み重なることによって肥満や糖尿病を引き起こしさまざまな疾患がドミノ倒しのように負の連鎖を起こしていくことをいいます。そこで歯周病がメタボリックドミノにどのように関連しているのかを見てみましょう。
昨今の研究で歯周病が全身疾患の発症や進行に深く関わっている事は周知の通りです。特に歯周病は糖尿病と深い関係にあり歯周病が放置されるとインスリン抵抗性が高まりインスリンの効きが悪くなり血糖値が上昇し糖尿病を引き起こします。他にも循環器系に悪影響を及ぼすことによって高血圧になり脳卒中、心筋梗塞などの原因にもなります。また最新の知見によると歯周病はアルツハイマー型認知症の発症に関わっているアミロイドβを増加させるという研究結果を九州大学が発表したばかりです。このように歯周病は全身疾患の発症に大きく関わっています。お酒やタバコ、過食、運動不足などと同様メタボリックドミノの最上流の方に位置している歯周病を放置していると次のドミノを倒してしまうことになるのです。不良な生活習慣や歯周病を予防することで出来るだけ上流の時点で次のドミノを倒さないようにすることが全身の健康を保つうえで重要なこととなります。日頃から予防歯科に通う習慣は歯の健康を維持するためだけではなく全身の健康にも寄与しているという事がお分かりいただけたと思います。予防歯科に通う習慣がないとい方も是非、歯周病予防を始めましょう。