歯周病と糖尿病の深〜い関係
2021年12月03日
執筆者:日本抗加齢医学会専門医 上村英之
歯周病と糖尿病の深〜い関係について解説いたします。
歯周病と糖尿病の関係はニワトリと卵の関係のようにどちらが先かという議論になり「歯周病があると糖尿病が悪化しやすく」「糖尿病があると歯周病が悪化する」と言ったような極めて深い関係にあります。その関係性のメカニズムを紐解いてみましょう。歯周病がある人は歯周ポケットからTNFαのような炎症性の物質が血管を経由して体中に放出されています。この炎症性の物質はインスリン抵抗性をあげることがわかっています。インスリン抵抗性とは簡単に言うとインスリンが効かなくなるという事でインスリンが効かなくなる事で血糖値が下がらなくなると言うわけなのです。
歯周病が中等度以上に進んでいる人は歯周ポケットの総面積はてのひらと同程度と考えられています。この手のひらサイズの歯周ポケットから歯周病を治療しないで放置することで絶えず、からだ全体に悪影響を及ぼす物質が出続けていることは無視できない問題であることが理解できると思います。
また逆に糖尿病があると、免疫力が下がり細菌に対する抵抗力が低下するため感染症である歯周病も起こりやすくなるというわけなのです。また、糖尿病になると唾液の分泌量も減り口が乾くため、口腔内の自浄作用が低下し歯周病が進行しやすくなるダブルパンチを食らってしまうわけなのです。
このように糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が糖尿病を悪化させるという負のスパイラルが出来上がってしまうということになります。現在、糖尿病治療において糖尿病専門医の医師の間では内科的な治療の他、歯周病治療も並行して行うことを強く推奨しています。実際に内科的治療で下がりきれなかった血糖値が歯周病を治療した事でさらに低下したという事例はたくさんあります。歯周病予防は歯を健康的に維持するだけでなく身体にも良い影響を与えることがご理解いただけたのではないでしょうか。特に糖尿病のある方はこの負のスパイラルを一刻も早く断ち切るべく歯周病予防を始めましょう。